ブランディング 約8分で読めます

店舗が選ばれる理由は、どうつくるのか。ブランドが成り立つ3つの状態

店舗のブランドはロゴや世界観のことではありません。選ばれる理由を体験として設計し、約束し、守り続けること。成り立っている状態を3つに分け、つくる前に答えを出すべき5つの問いまで整理します。

ブランディングに投資すべきか判断したいが、何が成果物になるのか掴めない。ロゴや内装の話なのか、発信の話なのか。この記事は、店舗や施設の経営を預かっている方に向けて、GIFTが使っている考え方をそのまま書いています。

結論を先に書きます。店舗が選ばれる理由をつくるとは、ロゴや世界観を整えることではありません。選ばれる理由を体験として設計し、約束し、守り続けることです。 それが成り立っている状態は、3つに分けられます。

店舗が選ばれる理由は、ロゴや世界観のことではない

ブランディングの相談が、しばしばロゴと内装の話から始まります。無理のないことです。目に見えて、見積もりが出て、終わりが分かるのはそこだけだからです。

ただ、ロゴを変えても客数が動かないことがあります。きれいになったのに、来店の理由は増えていない。原因は制作物の質ではなく、何を伝えるための制作物なのかが決まっていなかったことにあります。

ブランドが成り立っているとき、次の3つがそろっています。

  1. 想起される理由がある

    いつ・誰が・どんな気分のときに、どの選択肢の中から選ばれるか。「◯◯なら、あの店」と言われる場面が決まっている状態です。

  2. 期待どおりの体験がある

    何にお金が払われ、どんな状態を約束するか。来店前の期待と、店で感じることが一致しています。

  3. 深まり、育まれる

    一度の消費で終わりません。関わりを重ねるほどリピートとファンが増え、口コミで広がっていきます。

ロゴはこの3つを伝える道具で、3つそのものではありません。 だから順番を逆にすると決まらなくなります。

選ばれる店と、選ばれない店の分かれ目

同じ業態・同じ価格帯でも差がつきます。見ている分かれ目は5つです。

見る点選ばれる店選ばれない店
想起言われる場面がある近くて空いていた
期待と体験一致する写真と実物が違う
一貫性媒体と接客が同じ媒体ごとに別の店
武器発信に落ちている現場だけが知る
積み上がり理由が強くなる割引が増える

右の列は、どれも努力していないわけではありません。 むしろ施策は打っています。積み上がらないのは、打ち手がばらばらに置かれているからです。

つくる前に、答えを出す5つの問い

GIFTが最初にやるのは、制作ではありません。この5つに、この順番で答えを出します。

  1. いつ、どんな未来を求めるときに思い出される店か … 想起の場面。コンセプトの入口になる
  2. そのとき、どの選択肢の中から選ばれるのか … 比べられる相手。ここで競合と価格帯が決まる
  3. 何にお金が払われ、どんな状態を約束するのか … 価値と約束。価格と約束の言葉になる
  4. その期待に応える体験が、必要十分にそろっているか … メニュー・空間・接客の要件が出る
  5. それは続けられて、他から真似されにくいか … 投資の優先順位が決まる

順番が大事です。 4から始めると機能が足し算になり、3を飛ばすと値付けの根拠が消えます。

よくある失敗は4つの型に収まる

どれも「やっていること」は正しいものです。欠けているのはつながりです。

型欠けているもの
発信だけ頑張る店の中の体験
接客がついてこない接客への実装
媒体ごとに言うことが違うひとつのコンセプト
武器が施策に落ちていない発信の設計

4つに共通するのは、どこかで鎖が切れていることです。切れた箇所を探さずに施策を足すと、足した分だけ現場が重くなります。

具体的にどう設計するか:BUTTER tokyo の場合

渋谷のカフェラウンジ BUTTER tokyo は、GIFTが立ち上げから関わった店です。コンセプトは「ため息ではなく、前向きな深呼吸を。」

ここで売っているものを、シーシャやドリンクとは定義しませんでした。「何もしない時間」の肯定です。お金が払われているのはその心地よさだ、と決めたうえで、接点を一つずつ設計しています。

  • 空間 … 焚き火を囲む席の配置。昼と夜で変わる照明
  • 音 … 火の揺らぎのリズムと調和する旋律を軸に、オリジナルのプレイリストを制作した。無意識に心地よさを覚える店内の音
  • 接客 … ここが核です。ふつうは味の満足度を追いますが、この店では**「良質な深呼吸ができているか」**を顧客体験の中心に置きました。スタッフが観察してサービスするのは、シーシャやドリンクだけでなく、深呼吸の量、相手との距離感、時間が溶けているかどうか
  • 細部 … メニューの最上段にコンセプトの一文。コースターに BREATHE と MELT。トイレサインは真鍮の線。ハンドソープは自然派の銘柄

結果として店内で聞こえる声が変わりました。「シーシャが美味しかった」ではなく、「もうこんな時間か、あっという間だ」「こんな話までしちゃったよ」。SNSと口コミだけで、席が埋まる人気店になっています。

内装を飾ることでも、コンセプトを考えることでも、SNSで話題にすることでもありません。一貫したコミュニケーションと体験の設計が、ブランドをつくります。 無意識の心地よさを、意識的に設計する。これがGIFTのやり方です。

GIFTが、この順番で進める理由

発注先には型があり、主になりやすいことが違います。飲食コンサルは原価とオペレーションの改善、マーケティング会社は広告やSNSなど外向きの施策、制作会社はロゴやWebといった制作物。どれも必要な仕事です。

GIFTはそのどれでもなく、「顧客に選ばれる理由を、体験として設計する」ことを主軸にしています。 外だけを整えても中の体験が追いつかなければ戻らず、中だけを磨いても知られなければ最初の一人が来ません。切れやすいのはこの間です。

そしてGIFTは飲食店を直営しています。都内で3店舗を展開するBarブランドを含む直営6店舗をプロデュースしています。決めたことが現場で回るかどうかを、自分たちの店で先に確かめられます。

どのような店に必要か

必要なのは、選択肢が多い場所で戦っている店です。

  • 近くに同業態が複数あり、立地だけでは選ばれない
  • 割引を止めると客数が落ちる
  • 施策は打っているが、積み上がっている感覚がない
  • 現場の人だけが知っている魅力がある

急がなくてよい場合もあります。 近くに選択肢が少なく、立地で選ばれている状態なら、先に投資すべきは別の場所です。規模ではなく、比べられているかどうかで決まります。

進め方

決める工程が3つ、実装する工程が3つあります。順番は変えません。

括りやること
決めるらしさの開発(魅力の棚卸し)
決めるコンセプトと約束の定義
決める顧客体験の設計
店の中メニュー・空間・接客
店の外コミュニケーション設計
店の外クリエイティブ制作

どの入口から相談しても、通る順番は同じです。 新規の立ち上げやリニューアルをまとめて任せる形ならPRODUCE、すでにある店を継続的に動かす形ならSTORE PMになります。考え方の全体像は飲食店のブランディングとはにも書いています。

よくある質問

店舗のブランディングとロゴ制作の違いは何ですか?
ロゴは成果物のひとつで、ブランドそのものではありません。ブランドは「いつ誰にどんな場面で思い出されるか」が決まり、来店前の期待と店で感じることが一致し、関わるほど関係が深まる状態を指します。ロゴはその状態を伝える道具として最後につくるものです。順番を逆にすると、何を伝えるロゴなのかが決まりません。
選ばれる理由は、どうやって見つけるのですか?
新しく考えるのではなく、すでにある魅力の棚卸しから始めます。現場の人だけが知っていること、常連が口にする言葉、たまたま続いている習慣。そこに理由の種があります。見つけたあとに「いつ・どんな気分のときに思い出される店か」という形へ言い換えていきます。
コンセプトを決めたのに現場が変わらないのはなぜですか?
コンセプトが判断の基準になっていないからです。言葉として決まっても、メニューの構成・席の配置・最初のひと言・何を薦めるかに翻訳されていなければ、現場は従来どおり動きます。決めることと実装することは別の工程で、後者のほうが時間がかかります。
小さい店でも必要ですか?
規模ではなく、競合の数で決まります。近くに選択肢が少なく、立地で選ばれているなら急ぎません。選択肢が多い場所では、理由がない店は「近くて空いていたから」で選ばれ、条件が良い店が現れた瞬間に乗り換えられます。選ばれる理由は、その乗り換えを止めるものです。

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